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2003-05-20

_ 中谷彰宏『面接の達人2004 バイブル版』(ダイヤモンド社)

さて、今さらながら『メンタツ』を買ってきた。すべての基本、バイブル版。おもいっきり偏見があって中谷彰宏の本をまったく読んだことがなかったわけだが、なかなか面白いのはさすがである。特に、冒頭の数ページでこちらの状況を言い当てる的確な「つかみ」はまさに「面接の達人」の面目躍如といったところで、信頼感を多いに高めている。たとえばこうだ。

迷信1
みんなが『メンタツ』を読むと同じ答えになるのでは?

真実1
みんなと同じことを言わないために『メンタツ』はある。

さらに畳みかける。

『メンタツ』を読まない人(4)
→[ただ屁理屈をつけて行動を起こさない面倒臭がり屋]

鋭い。ごめんなさい。これに加えて、「自己紹介は難しいものだ」とはっきり認識している点も、読んでみようかという気にさせられてしまった*1

ただし、ここでもまた個別性の問題(20030511参照)は残っている。まずこの本では、確実に僕の状況に対応しない点が多々ある。まず僕は年齢も経歴も普通の「男子学生」ではないし、より状況は厳しいと言われる「女子学生」でもない。中谷のことだから需要の増えつつある「第二新卒」版も出しているかと思いきや、まだ出していないらしい*2。市場規模がまだ小さいと見ているのだろうか?

さらに、ダメ押しの表現をみつけてしまった。

 就職試験の志望者には3つのタイプがある。
(1)公務員上級職もソニーも全日空も三井物産もフジテレビも電通も、どこを受けてもことごとく内定をとってしまうタイプ。(……)
(2)ミーハーな会社は全部記念受験したが、全て1回戦で敗退。自分はサラリーマンには向いてないと悟ってしまう潔い人。
(3)当落線上にひしめき合っていて、誰が通って誰が落ちてもおかしくない人たち。
 君はまさに、(3)のグループにいるのだ。

 (2)なんですけど。

とはいえ、役に立つことは書かれているし、就職面接だけにしか役に立たないことでもないので、疎外感その他すべてをカッコに入れて読んでみるのである。

*1 ただし、中谷の場合「面接に受かるための自己紹介は……」という意味が含まれており、必ずしも「的確な自己紹介は……」と言っているわけではない。後者が存在するのかどうかはわからないが。

*2 ただし「第二新卒」というわけでもない。

_ 自分の個別性と「個性」、共通性については色々思うところがあるので、いずれ時間をみつけて、20030511と絡めながらじっくり叩いてみたいと思います。

_ 伊藤整『近代日本人の発想の諸形式 他4篇』(岩波文庫)がよかった。僕はどうもマスターピースより小作やエッセイを選んでしまう傾向がある。

佐藤智佳『壊れるほど近くにある心臓』(河出書房新社)が読みたい。タイトルから推して、今回もまた身体への執着・違和感みたいなものが関係するんだろうか。『肉触』では部分的にそういう箇所があったわけだが、他人にさらして恥ずかしいものをきちんと出しているのがえらい。インタビューで「本屋で自分の本を見ると倒れそうなほど恥ずかしい」と言っていたのが思い出される。

_ 「私のセールスポイント」を1つ書くために2時間考え続けているというのは、どう考えてもおかしい。その大半は「おかしいなぁ」と思っている時間なのだが……やはり通常の就活学生がこういう苦しさを味わうことはないのでは、と思う。

『メンタツ』を読まない人(2)
→[自分の話すことはユニークだと勝手に思い込んでいる人]

ということなのか、そうではないのか……どちらの結論を導くこともできそうなのが、この議論のポイントである気もする。人との違いに注目すると同じところが浮かび上がり、同じところに注目すると違うところが見えてくる。そうして見えてきた違うところは、およそセールスポイントではない。

「やめる」と思ってしまうとそちらへ流れていってしまいそうで怖くなる。少なくともこの点は、すごくありがちだと思う。