_ 「やりたいことが何なのかって、考えたことある?」
「うん」
「やりたいことが『何もしたくない』だと思ったことは?」
「ある」
「じゃあ、それを実行しようと思ったことは?」
「ある……かな」
「で、実行した?」
「ちょっとならね」
「おお、いいね。どうなった?」
「すぐやめた。つまんなかったし」
「だよね」
「つまんなくても、何かしてたほうがマシだし」
「それを貫くために、死ぬことを覚悟したりしなかった?」
「なんでそうなるの? あるわけないでしょ、そんなの」
「僕も、ないね」
「ないよ」
「…………」
「…………」
「っつか、アラブ圏の映画ってさー……」
483871422XNo.001 の整理券と『六月の蛇』単行本を忘れず確認し、いそいそと有楽町へ向かう。開始の17:00ちょうどくらいに現地に到着し、三省堂の前に行ってみると、心配をよそにしっかりと行列ができていて、テレビか配給者かわからないけど取材のカメラも入っている。さすが邦画の雄である。
しばらく列に並んでいると、5人ずつ通されはじめた。ちょうど50人くらい終わったところで順番がきた。二人前のひとが、携帯のカメラで記念撮影をお願いしていて、監督もこころよく応じていた。ギャラリーにも笑顔が浮かび、なごやかなムード。で、すぐに僕の番がきた。
やはり整理券の通し番号が001なのに開催側のひとが気づき、それとなく振ってくれたので、監督から質問が。
などと、緊張していたためにバカ正直に答えてしまい、見事に裏目るといういつものパターンに。「何時ごろ買えば一番だったんですか?」
「そんなに早くなかったんですよ、数日たって買ったのに一番だったんで、ちょっと心配してたくらいで……」
もう一つ、
「すごく面白かったんですけど、もう書かないんですか?」
と尋ねてみたら、
とおっしゃっていた。あとがきでも「大変だった」とこぼしていたので聞いてみたんだけど、そう言わずにぜひまた小説も書いてもらいたいところである。ここまで正直に変態性を露出できる作家って、あまりいないような気がするし。「いやー、すんげぇ大変だったんでねー」
笑顔で話す頬は少し紅潮していて、慣れない「サイン会」に戸惑いながらも、はにかむ様子がとてもよかった。会場を去りながら、「100人限定ってことは、もうちょっと喋っても許してもらえたのかもなぁ」と思いつつ、心地よい余韻を持って帰路に。