トップ «前の日記(2003-01-01) 最新 次の日記(2003-01-03)»

2003-01-02

_ 『雲のむこう、約束の場所』

先日、友人の亜血亜から悲痛なメールが入り、新海誠さんのページで、2003年発表予定の新作『雲のむこう、約束の場所』のパイロット版ムービーが公開されたことを知りました。

見てすぐに、亜血亜が悲痛なことを言うのが理解できました。早くも、前作の「一人ガイナックス」から「一人スタジオジブリ」の領域に足を踏み入れた、という噂がささやかれているようです。いやマジで、すごい。今回は「LIFE NO COLOR」などの作品でも知られている田澤潮さんがキャラ作画を担当、弱点だといわれていたキャラの穴が完全に埋まってしまいました。また、主人公の一人の声を担当しているのがどうやら吉岡秀隆らしいというのもポイントです。しかも舞台が北海道とからんでいると来たら、『北の国から』ファンは泣くしかありません。

今回の登場人物は3人。『彼女と彼女の猫』は1人(と1匹)、『ほしのこえ』は2人ときて、とうとう3人です。関係は入り組みます。ドキドキですよ。

でも、今回も通底するテーマは変わっていないと思います。

世界は本当にきれいだけど
でもさびしくてさびしくて 無音で
私だけが 世界の潤いや あたたかさや やさしさや 楽しさから
遠く遠く離れている そんな気がする
(ヒロインの台詞)

こういうことを、恥ずかしがらずにきちんと考えているところが、えらいと思います。実際、受け手の反応もいいわけです。いくらものごとをひねくって考えていても、こういうものをすとんと目の前に置かれると、そのまま崩れてしまう。どうしても強くて、悔しいなーと思いながら、泣けてしまう。それでいいわけです。

眠り続けてしまう15歳の少女が、少年の助けを受け現実の世界に向き合おうとするという過程を描くことが、実際に現実社会を生きる自分たち自身にとってもささやなかな支えになることを信じて、気合いを入れてやっていきたいと思います。
(新海誠)

パイロット版でヒロインが読んでいるのは、宮沢賢治「永訣の朝」(詩集『春と修羅』所収)。本が積まれている1カットは、上から、谷村志穂『僕らの広大なさびしさ』(幻冬社文庫)、村上春樹『海辺のカフカ 上』(新潮社)、山本文緒『ファースト・プライオリティー』(幻冬舎)。以前、彼の日記に書かれていた本を読んだらおもしろかったので、また読んでみようかと思います。『海辺のカフカ』は読んだけど。