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2003-10-06

_ 手にしたいような触れたくないような 初霜に咲く白菊の花

直接に言ってしまえば一文で済んでしまうような何がしかの事実や考え、あるいは経験、あるいは感情とか想いとかそういうものを、わざと遠巻きに、じらすように隠し続けながら進んでしまうのはなぜかといえば、その一文には宿らないと思えるような何かがそこにあると、少なくとも言葉には乗りきらない何かがあるだろうと思ってしまうからだ。あるいは少なくとも、自分にとってのそれが、別のもの、言葉やそういったものへと容易には置き換わらないものだとその時は思うし、できることなら他の人へ提示されるときにもそうであってほしいと願ってしまうからだ。

「それは名指しすることができるけれども、その瞬間、常にそれから逃れてしまう」なんて言うと途端にペダンチックになってしまうけど、それをすくい取ろうとした瞬間に容器からこぼれ落ちる何物かがあると思ってしまうからこそ、それに直接手を触れるか触れないかの微妙な位置を探そうとしてしまう。そういう過程から、そこには書かれていないけど書かれているはずの何かが、おぼろげにでも現れてはくれないものかと期待してしまう。

だから、僕は自分が言葉に期待しているのいないのか、よくわからない。あるいはそれでもなお頼るしかないという束縛もあるのかもしれなくて、でも中には恐ろしい熟考の末に沈黙するしかないという結論に達してしまった人もいたりして。とはいえ語りうることの臨界にあるかどうかもわかっていないことがらを抱えてしまえば、沈黙してよいのかどうかもわからない。

あるいは他人からの借り物で十分事足りてしまうものなのかもしれない。あるいは言ったって無駄なのかもしれない。だから沈黙と飽和との間でひたすらよろめいて、「これが新しいステップなんです」と言い訳をする。新しいステップなんです。

_ リクエストに応えてみようとしてみたんですが、思ったより難産でして、考えたことのほとんどはまとまりがつかなくなってしまいました。で、ひとまず上のようなところに着地してみたんですが、他にこまごまとした理由や事情があるとしても、最終的に行き着くところはそういうことなんじゃないかと思っています。

宿題としてかかえておいて、何か浮かんだときに戻ってきたいところではあります。