『ユリイカ』黒田硫黄特集号をぼちぼち読み進める。最近、評論のような硬い文を読むとすぐ疲れるようになった気がする。
以下、黒田硫黄(漫画家)・穂村弘(歌人)・西いづみ(アシスタント)の対談から。
穂村 五、六年前に初めてお会いしたとき、なんて思い切ったマイナーな作風なんだろう、と驚いたけど、それが映画になっちゃうくらいメジャーになったんだからすごいよね。今日、来る前に「黒田硫黄」で検索したら「柴田ヨクサル」よりもはるかに多くヒットしたし (笑)。真にマイナーな作家で真にメジャーになるのは天才しかいないから、やっぱり天才だったんだと思うしかない (笑)。
黒田 それはネットで日記を書く類の人にピンポイントで当たっているということで、それはぜんぜんメジャーじゃない (笑)。だから、すごいメジャーな漫画家が意外とヒットしないということはよくありますよ。
穂村 それはたとえば「わたせせいぞう」とか名前を出すことが自分を傷付けることになる名前と、自分を高めてくれそうな名前とがあって、「黒田硫黄」は断然後者なんだよね。
黒田 でも、ネットを見ていると、不当に評価が高い気はします。
穂村 黒田硫黄について書かれた文章って内容の正しさとは別に、黒田硫黄を選んだ自分を誇るみたいなところがあるよね。
—— 読者ということで言うと、黒田さんは「大衆性」と「アート生」のバランスって意識して書かれているんですか。
黒田 意識してできるんなら、やってますよ (笑)。
—— 再三、マンガに没入してほしいということを言ってますよね。
穂村 それもまた人をムラムラさせる憎い発言で、この作風でそんな口を利くか、自分だって知っているんだろうと思うよね (笑)。没入というよりは、読者が我に返ってオマージュを捧げたくなるという作風でしょう。
黒田 それはいやらしい言い方だけど、まだまだ修行が足りないなと思いますよ (笑)。
穂村 つげ義春は好きですか。(……)
スネに傷があるので思わず笑った。最近だと、マンガなら黒田硫黄だろうし、日本映画なら黒沢清とか青山真治とか、アニメだと新海誠がそういうところから出たんだろうし、小説ならメフィスト系作家とかいうことになるのかもしれない*1。
こういう層を狙いすまして作品を作るということは、少なくともモーニング娘。をプロデュースするより難しい*2ことだと思うんだけど、かといってバカにしきれない市場を形成しつつあるんじゃないかと思ったりするのは「ネットで日記を書く類の人」らしい感想だなぁ。でも、そこに共通してるものを探ってみるのもおもしろそう。
それはともかく、自分がそういうものを中心に追いかけてばかりいるような気がしたので、もうちょっと他に目を向けてみようと思った——ところで、どうやったらそういうものをみつけられるのか見当がつかなかった自分はかなりヤバイと一瞬思った。