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2003-04-23

_ 塚本晋也『六月の蛇』(マガジンハウス)

483871422X筆記試験を受けたあと、ゼミで聴きに行く講演まで4時間くらいあった。試験が有楽町だったので映画を観ようと思っていたのだが、体が空いたのが14:30ごろで、「有楽町ならこれかなー」と考えていた『ボウリング・フォー・コロンバイン』と『ぼくんち』、次点の『ドリームキャッチャー』の開始時間はもう過ぎていた。ちょうどいいタイミングだったのは『スピリット』と『クレヨンしんちゃん』で、特に『クレしん』は観ておいていいかなーとも思ったのだが、しばらく本を読んでいなかったので読書でつぶすほうを選ぶことにした。

さっそく三省堂に入って店内を物色していると、「塚本晋也サイン会」の告知ポスターが貼ってある*1。これはサインをもらっておかなくては。迷わず『六月の蛇』を買って整理券をもらう。見てみると、通し番号がなんと "001" だった……発売から1週間ほどたってるんだけど、大丈夫なんだろうか……ちなみに先着100名らしいので、お早めに(一応)

さっそく近くの喫茶店で読む読む読む、店を変えてまた読む読む読む。一気に読了。おおまかな内容は以下を参照。

『六月の蛇』は、同名の映画*2の原作、というか先行ノベライズである。「素晴らしい映画監督は変態エロでなければならない」というのは譲れない至上命題*3だが、その意味では合格点をはるかにオーバーしている。さすが世界の塚本である。それは小説というかたちでもいかんなく発揮されていて、読みながら思わずニヤついてしまうほどだった。とても処女作だとは思えない。

セックスは、たった一度しか出てこない。それも、あまりフォーカスはあてられない。そうでない部分が、よりエロい。そして、全編を通して背景に漂う死がエロさをより際立たせる。際立ったエロが、再び死を際立たせる。エロと死のスパイラルは、とぐろを巻いて上昇してゆく。もしかしたら「ありがち」と思う人もいるとは思うが、やっぱりおれはストイック・エロにとことん弱かった*4

でも、肉と妄想はどちらだけでもダメで、真のエロがそのあいだのどこかにある、または両者の交わりの果てにあるのは間違いない。嫉妬も抑制も理論も思いやりも、結局はエロの前に瓦解してゆく。むしろ、瓦解の快感を高めるための伏線でしかない。そして、至高の瓦解が訪れてしまったら、もうあとには死ぬくらいしか残っていないのだ……って、ダッチロールでネタバレ回避しながら嗜好を述べてもどうしようもないな。

なんか福田先生が三島由紀夫賞をあげるような気がします。とりあえずこれから、サイン会に備えて塚本作品に漬かります。映画版ももうすぐ公開する(はず)

*1 マガジンハウスのお膝元・銀座に近いからかな?

*2 ベネチア国際映画祭の審査員特別賞をはじめ、いろいろ受賞している。

*3 とまでは言えないかもしれないけど、良い監督が変態エロであることは多い。

*4 もしや映画監督の素養が……。